透析治療問題

透析治療問題、患者への配慮がまだまだ足りていない。国レベルでもっと患者に対するケアの大切さを広めるべきだと感じます。

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「人工透析」究極の命の選択 延命か、中止か―2019年4月21日号

 透析大国ニッポンが難題に直面している。東京都福生市の公立福生病院で昨年8月、腎臓病の女性(当時44歳)が人工透析を取りやめて死亡した。延命か、中止かという「究極の命の選択」を巡り、さまざまな議論を呼んでいる。尊重すべきは一体、何なのか。

 3月下旬。東京・池袋の喫茶店で、一人の男性が長袖シャツの左袖をまくりあげた。
「やっぱり、痛いですよ。針を刺す時は」
 沖縄・宮古島在住の池間真吾さん(48)。腕の血管が太く膨らんでいる。人工透析を受けるため、手術で動脈と静脈をつなぎ合わせた「シャント」があるためだ。透析歴は10年になる。
 広島の放送局で報道記者だった30歳の時、会社の健康診断でたんぱく尿を指摘されたが、夜討ち朝駆けの激務を続けた。好きだった旅の仕事をするため34歳で脱サラし、沖縄に移住。民宿やレストランを経営し、仕事は順調だった。
「自営業になった4年で病気が進んだのでしょう。健康診断を受けることもなかったですから。たまたま受けた血液検査で腎臓病であることがわかり、透析をした方がいいと言われました」(池間さん)
 人工透析を始めると週3回の通院が一生続くことになり、仕事も旅行も思い通りにならない。そんな不安から透析を拒否し続けた。顔がむくみ、夜中に寝ていると足がつるという症状に見舞われた。腎機能の低下を示すクレアチニン値は、正常の20倍にまで上昇した。
「このままでは死にます」
 医師から最後通告を受け、38歳で透析を導入することになったのだ。
「半年透析を拒否し続けた間、尿毒素が体内に回って血管がボロボロになりました。内臓からの出血で19回も手術しました」
 そう振り返る池間さんは今、透析患者が出張や旅行先で困らないようサポートする会社「旅行透析」を経営している。透析患者を全国各地に在宅雇用し、2年かけて日本全国4000以上ある透析医療機関の情報をデータベース化するとともに、旅先での透析病院の手配などを提供する。

 ◇患者33万人、年医療費1・6兆円

 出張先の東京で透析を受ける池間さんに同行し、「東京透析フロンティア池袋駅北口クリニック」に着いた。池間さんは体重を量ると83キロ。ベッドに横たわりながら、こう説明する。

「今日は5時間受けます。昨日は7時間受けました。一般的に透析は週3回4時間程度と言われますが、体重40キロの人と80キロの人が同じ時間というわけにはいきません。長時間透析した方が体調はいいのですが、そのことを知らない人や、時間の制約があって受けられない人もいます」
 腎臓には、食事をしたり水を飲んだりして体にたまった余分な水分や老廃物をろ過し、尿を作り出す役割がある。透析療法は腎臓病が進行して腎不全になり、その役割が自力ではできなくなった患者に対する治療法の一つで、専用の装置を使って血液中から老廃物や余分な水分などを取り除く。血液を体外に出して除去用の膜に通した後、再び体内に戻す「血液透析」(上図)が日本ではほとんどだ。池間さんの場合、5時間透析を受けると体重が3キロ減るという。
「腎臓は一度壊れるともとに戻らない。生活習慣の改善と定期検査を欠かさないこと、再検査と言われたら必ず行くことが大事です」
 自らを反面教師に、透析患者の実態を情報発信する池間さん。妻と7歳、4歳、1歳の子どもとの生活を守るため、透析で命をつなぐ。福生病院の問題については、こんな感想を述べた。
「家族からの腎臓移植などほかの選択肢はなかったのでしょうか。44歳とまだ若い。”透析中止”という死の選択肢を与えるというのは考えられません」
 日本透析医学会の統計によると、2017年末時点で国内の人工透析患者数は33万4505人と年々増加傾向にある(219ページ表1)。平均年齢は68・43歳で、原因のトップは糖尿病だ。人口100万人あたり2640人、人口比では台湾についで世界で2番目に多く、国民の378・8人に1人が透析患者という”透析大国”である。血液透析は月40万円程度かかるが、患者の経済的な負担を減らすための公的助成制度があり、自己負担額は月1万~2万円程度。1人の透析患者の年間医療費は約500万円で、国内の透析にかかる医療費は推計1・6兆円に達する。
 透析には血液透析のほか、自らの腹膜を使って尿毒素の除去を行う「腹膜透析」もある。腹部に管を埋め込む必要があり、血管ほど長期間は使えず、10年程度が限界とされ、国内で受けているのは9000人ほどだ。
 また、日本が諸外国と比べて少ないのが、腎移植である。腎移植や透析療法に詳しい新潟大名誉教授で大塚台クリニックの高橋公太院長(70)が解説する。
「日本では腎不全患者の約9割が透析療法を受けているが、ヨーロッパでは移植と透析療法の割合は半々。移植で腎機能が回復すれば、週3回通院する透析療法より生活の質は向上します」

 ◇透析患者の「終末期」とは何か…

 日本移植学会の「臓器移植ファクトブック2018」によると、17年の腎移植件数は1742件。親族間の生体腎移植が1544件と大半で、主流となるべき脳死と心停止後を合わせた献腎移植は198件にすぎない。献腎移植希望の登録者は約1万2500人いるが、年1%強しか実施されていないのが現状である。高橋氏が言う。

「腎移植に関する情報が十分伝わっておらず、臓器提供者が少ない。日本人の死生観も影響していると感じています。福生病院の問題は単に事件として取り上げるのではなく、これをきっかけに腎臓病患者の治療がどうあるべきか議論を深め、尊厳死や患者本人の意思をどのように尊重すべきか考えるべきです」
 患者の立場からの意見にも今一度耳を傾けたい。イラストレーターの中村益己さん(53)は38歳の時、血液透析を始めた。幼いころに膀胱(ぼうこう)炎になり、その菌が腎臓に逆流して腎臓機能が弱ったのが原因という。患者同士の交流や透析に関する知識を解説した漫画『透析バンザイ』の著者でもある中村さんが、福生病院の問題についてこう話す。
「透析中止ではなく、患者さんや家族への”心のケア”が必要だったと思います。通院の透析治療は長時間拘束されるのでストレスがたまります。『日本の透析医療は世界一』といいますが、患者の心の問題にも目を向けてほしい」
 中村さんは今、在宅血液透析をしている。施設でする血液透析を自宅で行うもので、自分の都合に合わせて透析の回数や時間を調整できるため、通院よりも体は楽になったという。
 さて、今回の問題の論点の一つに透析患者の「終末期」がある。末期腎不全という病名から「透析患者=終末期」とする意見もあるが、日本透析医学会は3月25日、「透析を行っている患者さんは終末期には含まない」と声明を発表した。
 219ページの表2は、患者の透析歴を示したグラフである。腎臓内科医として約50年間、透析医療に関わる西クリニックの西忠博名誉院長(75)がこう言う。
「透析によって体をコントロールすることで患者は長年にわたって命をつなぎ、ほぼ普通の生活をしています。看取(みと)りも経験しましたが、余命宣告を受けている患者でも最後まで透析の拒否はありませんでした」
 日本透析医学会によると、17年末時点の透析患者の平均透析歴は7・34年。10年以上は27・8%を占め、最長で49年を超える。透析を導入し始める平均年齢は69・68歳と高齢化が進み、さまざまな重度の合併症を抱える患者も増えている。西クリニックでは16年、「終末期にどのような治療を受けたいか」というアンケートを外来患者142人に実施した。対象者の平均年齢は66・4歳で、その結果について西氏がこう説明する。
「終末期に回復の見込みがない状態になった場合、人工呼吸器や胃ろうなど他の延命治療はほとんどの人が希望しませんでした。ところが、透析は継続を望む患者が3割いたのです。長年透析を受けながら生きてきた患者にとっては、『透析中止や見合わせ』は重い判断といえるでしょう」

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