芸能人やプロのスポーツ選手が通っているから良い治療法だと鵜呑みにしないでください!
記事元:ペインクリニカルセンター
Hさんは、御自身が受けた民間療法に疑問を感じ当院を探し当てていらした方でした。Hさんが受けていらした治療方法は、言って見れば「気功」と称するものの類です。近年よく見かける治療法ではありますが、芸能人やプロのスポーツ選手が良く通っているという有名なものだったのです。たまたま、私も数週間前に週刊誌や写真雑誌等で見たことがあるものでした。偶然にも、それをやっている先生の奥様とHさんがお知り合いだったことから、御自身の腰痛をなんとかしたいと思い奥様を通じて頼み込み治療を受けることになったのだそうです。
治療院に伺うと、これ見よがしにあるプロ野球球団の選手たちのサイン色紙が沢山飾られていたそうです。
芸能人の物も幾つかあったと言います。
実際に、治療を受け始めてみると何の変化も感じず、数回受けた時に思い切って「先生、申し訳ないのですが腰痛の痛みは一向に変わらないんですがどうしたのものでしょうか。」と相談したそうです。そうしましたところ「あなたの腰痛は、難しくてやっかいだから、これはもう治らないよ。」と突き放されてしまったとのことなのです。治療者から突然、つっけんどんにそう言われてしまっては患者さんとしては立つ瀬がありません。それで、行くのをやめてしまったとのことでした。
こうした話は実によくある話でして、一種の心理療法に近いことをやり痛みを感じなくさせてしまうというマジックのようなものなのです。うまくいった場合は、特に内科的な病気の場合、本人が治るという意欲が湧くことに繋がり、病気を自分で克服する力が増して本当に治ってしまうこともあるのです。いかに人間は気持ちの持ち方でいかようにでも変化する生き物であるかを端的に物語る話でもあるのです。話を戻しますが、手法がなんであるにせよ、痛みが引けば患者さんは喜んで帰られます。その上、治療者が人当たりが良く、会話も上手な方であれば、評判にもなるでしょう。しかし、 Hさんのように心理的な療法にはなじまない方の場合はどうしようもなくなっ
てしまうのです。ましてや、物理的に体が壊れていて痛みを発している以上は、心理療法で誤魔化すことが出来る範囲は限られてしまうことは言うまでもありません。
もし、そうした痛みも一時的せよ消してしまえる様な事があればもっと問題です。
物理的に壊れている痛みのサインを分からなくさせてしまうことは、更に壊してしまって取り返しの付かない状態にまでなる可能性が出てくるからです。
そこで、早速に治療をさせていただきました。拝見しますと、やはり単なる仙腸関節の機能異常が原因の実によくある腰痛のケースでした。一度で驚くほどに痛みが消えてしまいHさんも呆気に取られていらっしゃいました。「じゃあ、結局私は騙されていたことになるのでしょうか?」とおっしゃいますので「解釈の仕方によってはそう とも言えます。しかし、その治療で満
足している方もいる以上はっきりとインチキとも言えないところが難しいところなんですよ。時として心理的な効果で偶然にせよ病状が一気に良くなってしまうことも無いとは言えませんからね。また、法的には人の体に直接手を触れて無資格でマッサージのようなことをするわけでもなく、只手をかざしているだけですからマッサージ法違反でも摘発は難しいのです。Hさんの場合はとても精神的にしっかりされていて、論理的に物事を考えられる心の余裕があったから効かなかったと解釈されてもいいんじゃないですか。それが、普通の正常な心を持つ方の在り方だと思いますよ。」と申し上げたのです。
「しかし、はっきりしていることが一つあります。人の体に手も触れないで腰痛を治すということは、既に関節運動学に基づく治療法が医学的に明らかにしていますように、腰痛の重要なポイントである仙腸関節に手を触れないで動かして治療するということになります。常識的に考えてそのようなことが、可能だと思いますか?もし、可能だというならば物理の法則なんかぶっとんでしまいます。スペースシャトルが宇宙に行っても帰ってこられなくなってしまいますよ。そう考えれば、答えは見えてくるのではないでしょうか。」と申し上げました。Hさんも全てを悟られたようでウンウンと大きく頷いていらっしゃったのです。
確かに、どのような治療を受けようとそれは患者さんの自由ですし、自己責任の中で処理されているならなんら他人が口を挟む問題では無いと思います。確かに、痛みでなやまされどうしようもなくなれば、藁をもすがる思いで人から良いと聞けばなんでも試してみたくもなるでしょう。しかし、今一度冷静になって常識的に物事を判断する論理的な思考回路を正常に戻していただきたいのです。医療の世界だからと言って
決して世の中の常識から逸脱するものではないからです。なぜならば、所詮、人間が作り出した物であり、三次元の世界で起きていることだからです。奇跡が起きるとすれば、それは患者さんの心のありようが奇跡を呼ぶのだと思います。治療する側が自ら「奇跡の治療法です。」などともし言っているようなことがありましたら、「そのような方法で、治るのが奇跡だという意味だな。」と笑い飛ばして近づかない方が賢明だと思うのです。
また、何かと言うと、直ぐに「背骨がズレている。ゆがんでいる、曲がっている。だから痛みが出るのです。」と言う様な治療者は、その様な馬鹿げた文句で人様を騙して治療らしき事をやって来た、自らの今までの人生の在り方そのものがズレて、歪んで、曲がっている人なんだなと理解すれば良いと思います。
余談ですが、気功なる治療法をやっている方は、往々にして寿命が身近いとも聞きます。
私の知り合いの方がお世話になった事がある気功の先生と言う方も、40代の若さで突然亡くなってしまったと聞いて驚いた事があるのです。
この世界で仕事をしていますと、不思議と同様の話を良く耳にするのです。
患者さんに精気を吸い取られてしまっているからなのでしょうか?
命がけでやっているのに、自らが滅びて行く様な手法が割に合わないものである事は明白なのでは無いでしょうか。