【近年流行っている、体に触れないで治すと称する治療について】
記事元:ペインクリニカルセンター
近年、患者さんの体に触れないで治す治療と言うものを良く目にする様になって来ました。
気功と称する治療方法がちまたでは有名ですが、気功とはまた別の私には、奇行としか思えない訳の分からない治療法まで存在しています。
気功は、本来は、自らの体の中で呼吸法を使って「気を練る」という操作をし、自らの健康維持に役立てることをいうものなのです。
「内気功」と呼ばれるものしかありませんでしたし、これが、中国で4000年以上に渡って受け継がれて来たものだと言うことになっています。
太極拳がまさにそれです。その他気功法として様々なものが編み出されているようです。
しかし、この40年程前から突如として中国の方から「外気功」と称するものが入ってくるようになりました。自らの中で気を練るだけではなく、他人に向けて気を発射するというものです。果たしてそのようなことが可能なのかどうか?医学的には未だにはっきりとしたことは判っておりません。また、「気」というもの自体がなんなのかさえはっきりと判っていないというのが現状です。少なくとも、他人に向かって気を発射するという斬新なアイデアはつい最近のものであるということだけは確かです。
しかしながら、それまでも、含めて中国4000年の歴史と言ってしまうのですから、全てがオカルトチックな話になってしまうのです。
また、現代の中国における医療はあくまでも西洋医学が主となっています。中には、外気功を取り入れた治療をしている所もあるやに聞いておりますが、あくまでもそれは極めて例外的なケースととらえられているようです。日本のマスコミなどで面白おかしく取り上げられることがありますので、中国では東洋医学が中心で外気功まで普通にやっているかのような錯覚をされている方が沢山いらっしゃるかもしれません。(以前、NHKの番組でもそのように誤解されてしまうような番組が放映されてしまい、後日謝罪したという事件がございました。)しかし、実態はそうでは無いということを知っておいていただきたいのです。
関節運動学が明らかにしている様に、関節の物理的な動きに異常をきたす事で周囲の筋肉に必要の無い痛みをもたらし、それを痛みとして人体が感知する痛みが日常生活においては殆どである事が分かって来ています。
人体に手を触れないで治すと言うことは、関節が物理的に異常をきたしている部分を、手を触れないで動かして治すと言うことになってしまいます。
ここまで来ると、オカルトになってしまうのです。
気功がどうのと言うよりも、一種の心理療法による痛みを頭から消し去る行為に近いものになっているのでは無いでしょうか。
痛みで苦しむ方にとってはそれもありがたい事ですから一つの試みとしては良いことだろうと思います。
しかしながら、物理的に壊れたところをそのままにして治さず、痛みを感じなくなってしまった事で使い続けてしまうと完全に壊れてしまうことは容易に想像が出来ることなのです。
物理的に体が身動き出来ない状態になっても痛みさえ感じなくなればそれでも良いと言うのでしょうか?
痛みから逃れたいと言う思いが、盲目にしてしまう一面もあると思いますが、なるべく多角的な側面から情報を集め医学的に分かっている事を全て確かめ理解した上で治療方法を選択していただければと思います。